1.PPM1D結合ペプチドの合成とPPMID阻害活性測定 ペプチドファージライブラリーからPM1D内部に存在するPro loop類似配列がスクリーニングされたことから、今回ペプチドP loop(21-49)をFmoc固相法により化学合成し、PPM1Dに対する阻害効果をin vitroで解析した。その結果、コントロールペプチドであるMT5ペプチドではPPM1Dペプチドはまったく阻害されないにもかかわらず、P loop(21-49)は濃度依存的にPPM1Dの活性を阻害し、IC50値594・Mを示した。今回、PPM1D内部に存在するP loopのペプチドが阻害することは、PPM1D自身による活性制御が示唆され、PPM1D阻害剤としての有用性に加え、PPM1Dの酵素活性発現メカニズムとして興味深い知見が得られた。 2.PPM1D基質を母体としたPPM1D阻害剤の開発 これまで申請者はPPM1D基質として知られている15位リン酸化p53リン酸化ペプチド(WT)の複数のアナログを用いた速度論敵解析により、PPM1D基質における酸性残基の重要性を明らかにしている。そこで、今回基質ペプチドのリン酸化セリン残基を非水解性のリン酸化セリンミミック体であるAP4に置換したペプチドアナログを作製し、PPM1Dに対する阻害活性試験を実施した。基質として最も高い親和性を示した3Eペプチドを母体としたAP4-3Eペプチドを合成しHPLC精製したところ、ジアステレオマーと考えられる2種類のペプチドが得られ、それぞれサブ・Mオーダーの高い阻害活性を示した。さらに我々は各AP4-3Eペプチドの阻害様式を解析したところ、AP4-3EペプチドがPPM1Dに対して不拮抗型阻害剤として機能しており、これまで報告されていない新規なPPM1D阻害剤であることが明らかとなった。さらに、PPM1Dのモデリング解析により、PPM1Dの活性中心近傍には正電荷に富んだ領域が複数存在しており、AP4-3Eペプチドの結合領域となることが示唆された。今回得られた基質と競合しないユニークな阻害ペプチドAP4-3EはPPM1Dを標的とした新規抗がん剤のリード化合物としてのみならず、PPM1Dの生体内における機能解明への応用が期待される。
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