研究概要 |
本研究代表者が研究を続けている、ピリジン環の2,6位がアセチレンを介して連なったエチニルピリジンオリゴマー構造は、ピリジン窒素と糖質の水酸基との多点水素結合を駆動力として、ピリジン窒素が内側を向いたらせん型の錯体を形成する。本研究課題では、このらせん形成をより確実にすることと、さらにその高次構造を共有結合で固定し、ホスト分子として利用することを目指している。本年度はまず、らせん型形成が容易かつ強固となることを期待し、同じ分子内に糖質部位を有するオリゴマー1(グリコシド+エチニルピリジン10量体)を開発した。合成は、Fischer法と、Sonogashira反応に拠った。そのオリゴマー1の塩化メチレン溶液、および対照として、糖質を持たないオリゴマー2(エチニルピリジン10量体)に等モル量のグリコシドを外部から加えた塩化メチレン溶液の、それぞれについて円二色性(CD)スペクトルを比較した。結果、1の場合はらせん形成を示す特徴的な誘起CDが見られた。一方で、2の系が示すCDは劇的に弱かった。これまでに研究代表者が開発してきたエチニルピリジンオリゴマーにおいて、鎖長の短いオリゴマー(12量体以下)が糖質と分子間で錯形成してCDを示した例はなかった。今回、分子内に糖質を連結することにより、エチニルピリジンオリゴマーと糖質との会合によるらせん形成が飛躍的に容易かつ強固となることが判明した。
|