研究課題
本課題で「分子ナット」と名付けた、糖テンプレートを共有結合で結びつけたエチニルピリジンオリゴマーの分子設計と合成、そしてそのらせん型高次構造の評価についての研究を行った。そして、糖テンプレートとピリジンオリゴマー部位の分子内水素結合によりらせん構造が効果的に安定化されること、さらにそのらせん構造の向きや強度が、糖テンプレートの種類やオリゴマーの鎖長により制御可能であることが分かった。本オリゴマーは人工分子であるが、糖テンプレートの種類や、連結部位とピリジンオリゴマー部位の鎖長はあたかも生体高分子の一次構造になぞらえることができる。そのバリエーションが高次構造に大きな影響を及ぼした様子が本研究で明らかになったためである。本年度の研究では具体的に、アセチレン結合を介してピリジン環を6〜14個連ねたオリゴマー上に、グルコース、ガラクトース、マンノースを結合させたオリゴマー群を網羅的に合成した。合成はFischer法とSonogashira反応に拠った。その一連のオリゴマーの塩化メチレン溶液は、オリゴマーの鎖長が十分に長い場合(通常は10個のピリジンが連なる場合)に顕著な円二色性(CD)をあらわし、分子内水素結合によるらせんの形成を示した。そしてらせんの向きはA群(α-グルコース、β-グルコース)とB群(α-ガラクトース、β-ガラクトース、α-マンノース)で完全に反転することがCDの符号から分かった。A群とB群の問の違いは、2位または4位のヒドロキシ基の向きが異なるだけであるが、その違いが大きな高次構造の変化をもたらしたものである。特にマンノースを有するオリゴマーでは、ピリジンの数が6個に留まる短い鎖長でも他のより長いオリゴマーに匹敵する強さのCDを与えるなど、非常に強いらせん誘起力が観察された。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Angewandte Chemie International Edition(オンライン版で掲載済みhttp://dx.doi.org/10.1002/ange.200604176) 46巻(印刷中)
Chemistry- European Journal 12巻
ページ: 7639-7647