平成18年度は、実施した本研究課題において特筆すべき二つの成果が得られた。 第一の成果は、金属酸化物の表面を強固に認識することのできるマンガンポルフィリンの開発である。このマンガンポルフィリンは、同一方向に向いた四つのアミノ基によって、種々の金属酸化物表面に強固に吸着し、ポルフィリンのマンガン金属イオンを金属酸化物表面に効果的に近接させることが可能である。種々の金属酸化物を用いて、スチレンのエポキシ化反応活性を評価したところ、酸化ランタン等の塩基性金属酸化物を用いた場合、触媒が失活せずTONが向上することが判明した。 第二の成果は、ピケットフェンスポルフィリンを基本骨格とする新規な金表面認識ポルフィリンの合成である。本ポルフィリンは、ポルフィリン平面に対し垂直に四つの硫黄原子を有しており、強固に金表面を認識可能であり、且つ、認識した金表面との間にサブナノサイズの反応空間を構築可能である。DMF溶液中、HAuC14を還元して得られる金ナノ粒子は本来不安定であるが、本ポルフィリンを金ナノ粒子の保護配位子として用いた場合、金ナノ粒子の粒子径が高度に制御されだけでなく、安定性も被覆によって飛躍的に向上する。これらの結果は、分子設計によって事前組織化された四つの硫黄原子が効果的に金ナノ粒子の金表面を認識していることに起因するものと考えられる。この結果は既に日本化学会春季年会(2K2-38)において発表している。
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