天然型mRNAを荷札として用い、かつ、全長蛋白質を提示できる改良型リボソームディスプレー法の開発を目標とする。具体的には、終止コドンを読み飛ばし、その後に続く非翻訳領域をリンカーとして利用可能な改変翻訳系の構築を目指した。昨年度においては原核系翻訳システムにおけるコンセプトレベルでの具現化を実施、RNAの安定性、リボソームディスプレー後のRNA回収率から再構成蛋白質翻訳系を用いた改変翻訳系の構築を検討した。また、3種の終止コドンを効率的に読み飛ばすことが可能なサプレッサーtRNAの探索を行ない、サプレッション効率、また、3種の終止コドンに対する適応性の点からtRNAserを基本とする3種サプレッサーが本系の目的を満たすことを見出している(サプレッション効率向上のため、Release Factor非含有翻訳システムを利用した)。また、天然型と同じ配列の(かつ、様々な長さの)3'側非翻訳領域を有する擬似天然型Dihydrofolate Reductase mRNAを人工的に準備し、作成した改変翻訳系でのリボソームディスプレーを実施した。終始コドンより3末端側にT7-tagを組み込んでおいたところ、T7抗体によるタグ釣り上げが可能であり、この結果より、本系において終始コドンの読み飛ばし、3'-UTRのリンカーとしての利用が可能であることが示された。また、DHFRの配列を標的とする抗体を用いた実験も実施した。併せて、終結因子を取り除いた非再構成型タンパク質翻訳システムの調整を目的とし、RF1に対するRNAアプタマーを取得、サプレッション効率を上昇させる系の構築にも成功した。
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