本研究では、光に応答するジェミニ脂質を各種合成し、これらを光分子スイッチとして用い、光により、リポソームを自在に集積・組織化することを目的とした。さらに、この系を展開し様々な分子スイッチを組み込んだ人工細胞の混合溶液から、必要なもののみを光によって選別しこれらを基板上に並べる「人工細胞ソーティング」の実現を目指した。これらの目的のもと研究を推進し、今年度は以下の研究成果を得た。 (1)光応答性分子スイッチの合成:ペプチド残基としてイオン認識が可能なアミノ酸を導入し、さらに、この脂質のスペーサー部位に、光応答部位のアゾベンゼン基を導入した分子スイッチを合成した。 (2)光分子スイッチによる人工多細胞システムの制御:光分子スイッチをリン脂質からなるリポソームに組み込み、その光応答に基づくリポソーム間会合挙動について、動的光散乱測定、示差走査熱量測定、ゼータ電位測定、蛍光異方性測定などの手法を駆使し、網羅的な知見を得た。具体的には、紫外光、可視光照射に応答して、水溶液中におけるリポソーム間の会合を可逆的に制御できることを明らかにした。また、基板として用いるリン脂質の種類を変化させることで、これらリン脂質からなるリポソームの相転移挙動を利用して、リポソーム間の会合を制御できることも見出した。さらに、この原理を展開し、光応答性分子スイッチを組み込んだリポソームの混合液体から、目的とするリポソームを光によって選び出し、基板上にソーティングできることを示した。
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