ホスト材料にドライプロセスとウェットプロセスにて成膜可能なスターバスト系材料を用いて、素子構造の違いによる効率や寿命特性への影響について検討を行った。それぞれのプロセスにて成膜した薄膜の光学吸収測定、蛍光測定及びFT-IR測定から、素子作製プロセスによる違いにより、成膜された薄膜中の分子集合状態が異なることが、素子特性の大きな違いになっていることが示唆された。ドープしたイリジウム錯体とホスト材料間のエネルギー移動の効率の異なりだけでなく、成膜したホスト材のキャリア伝導機能の異なりも素子特性に大きな影響を与えていることが見出された。また、有機層/陰極界面における数nm程度の界面構造が素子特性に大きな影響を与えていることを明らかにした。 ウェットプロセス可能なホスト材料として、同じフルオレン骨格を有するフルオレンオリゴマー材料と、ポリマー系材料のポリアルキルフルオレンを用いて、燐光有機EL素子の素子特性について検討を行った。オリゴマーとポリマー材料それぞれに赤色イリジウム錯体をドープした素子にて、最高輝度8000cd/m^2と2200cd/m^2、最高効率2.2と1.6cd/Aの比較的高効率な特性が得られ、初期特性は、オリゴマーをホスト材料に用いた素子の方が素子特性が高い結果が得られた。ホスト材料としてオリゴマー材料を用いた場合、時間と共にホスト材料の結晶化の伴う素子特性や寿命の低下がみられ、ポリマー材料の方が、素子安定性の面では優れている結果が得られた。 簡易プロセスであるウェットプロセスの利点を生かして、30cm^2の大面積のフレキシブル基板上に有機EL素子を作製し、発光特性を評価した。数千cd/m^2までは、ガラス基板とほぼ同じ特性が得られたが、高電流領域では、配線抵抗等の影響による熱的な効果や特定箇所への電界集中により発光輝度の素子特性や素子寿命の急激な低下が見られた。
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