Pd-ジフェニルグリオキシマート錯体[Pd(dpg)_2]を合成し高圧下において結晶構造及び電子物性に関する研究を行った。Pd(dpg)_2錯体の薄膜は真空蒸着法を用いてダイヤモンドアンビル上に蒸着し作成した。高圧下における粉末X線回折は高エネルギー加速器研究機構の放射光研究施設BL18Cにおいて測定した。電子スペクトル測定は昨年度に開発した顕微測光装置を用いて行った。Pd(dpg)_2の粉末X線回折プロファイルから格子定数を算出すると、圧縮率は軸毎に異なり異方的に圧縮されることが見出された。金属が一次元的に連なる鎖に沿ったc軸が最も縮みやすく、次いでa軸、b軸の順になる。同様な構造を持つPd-ジメチルグリオキシマート錯体[Pd(dmg)_2]は10GPaでPd-Pd間距離が87%まで減少するがPd(dpg)_2では77%と減少率が大きい。Pd(dpg)_2薄膜は420nm付近に中心金属の4d-5p遷移に基づく吸収帯を持つ。4d-5p遷移の吸収帯は加圧により長波長側に大きくシフトする。加圧によりPd(dpg)_2薄膜の色が5GPaまでに黄→赤→紫→青→緑→黄というように連続的に変化した。既にPd(dmg)_2が加圧により3GPaまでに黄→赤→紫→青と変化することを報告しているが、Pd(dpg)_2がさらに広い圧力範囲で多彩な変化を示すことを見出した。Pd(dpg)_2は広い圧力範囲において圧力インジケータとして使用できる。
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