研究概要 |
発光デバイスの多様化に伴い励起機構に応じた新しい発光物質が求められている。発光物質の代表である蛍光体では、多くは発光中心を母体にドープしているが、ドープ状態の制御が難しい。ドープを必要としない蛍光体として錯イオン蛍光体があるが、発光強度が弱いため用いられてこなかった。本研究では錯イオン蛍光体チタン酸塩Ba_2TiSi_2O_8に着目し、結晶構造の異方性に着目した合成を行い発光強度を増大させることを目的とした。 Ba_2TiSi_2O_8は珍しいTiO_5ピラミッドを構造中に含み、TiO_5ピラミッドの底面に垂直な1本のTi-0原子間距離は他の4本のTi-O原子間距離にくらべると短い。このためBa_2TiSi_2O_8は比較的強い青色発光を示すと考えられる。TiO_5ピラミッドの異方性を元素置換などで増大させることができればさらに強い青色発光が期待できる。まずBaよりイオン半径の小さいSrを固溶した(Ba, Sr)_2TiSi_2O_8の合成を行い、TiO_5ピラミッドの構造変化と発光の関係を調べた。Srの固溶にともないTi-O原子間距離の差は小さくなり、発光強度は減少した。発光強度の増大のためにはBaを大きなイオン半径を持つ元素で置換する必要があると考えられた。そこで、Kなどアルカリ金属でのBa位置の置換を試みた。アルカリ金属化合物の融点が1000℃以下と低いためか、生成物は溶解していた。XRDではBa_2TiSi_2O_8相はほとんんど変化しておらず発光強度は減少していた。
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