研究概要 |
高温燃焼ガス中には高濃度の二酸化炭素(CO_2)が存在する.酸化カルシウム(CaO)は600〜900℃でCO_2を吸収してCaCO_3となり,900℃以上でCaCO_3が分解してCO_2を放出するため,高温の燃焼ガスから効率よくCO_2を分離・回収できる性質を有している.しかし,繰り返し使用によるCaO粒子の表面積減少でCO_2吸収能が低下する.本研究ではCaOの多孔質体への被覆分散により表面積の減少が抑制できると考え,低熱膨張性立方晶ケイ酸塩化合物からなるセラミックフォームにCaOを被覆したCO_2吸収材料を作製し,そのCO_2吸収能を評価した. まず,低熱膨張性ポルーサイト化合物(Cs_<0.9>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6,以下9CAS)の非晶質仮焼粉末に水を加えたスラリー(重量比;水/粉末=1/1)をウレタンフォームに塗布・乾燥後、ウレタンフォームを600℃2hで分解除去し,1250℃で5h焼成してセラミックフォームを作製した.次に,このフォームにCaOスラリーを塗布し,乾燥後にArガス流通下800℃で2h熱処理してCaO被覆ケイ酸塩フォーム(以下,CaO-foam)を作製した.CaO-foamの気孔率は約90%であり,生成相はX線回折試験の結果より,CaO相と9CAS相のピークのみであり,CaOと9CAS基体とはほとんど反応しないことが分かった.そこでCaO-foamへのCO_2ガス吸収能を調査するため,示差熱重量分析装置を用いて,700℃でCO_2ガスを流通させてCaO-foamにCO_2を吸収させ,その後Arガスを700℃で流通させてCO_2の脱離を行った.CaO-foamに導入したCaOが完全にCaCO_3となった状態を100%としてCO_2脱離量からCO_2吸収率を算出した.CaO-foam中のCaOのCO_2吸収率は91%であり,15回のCO_2吸収・脱離操作後もその吸収率は89%と,ほとんど低下しなかった.一方,粉末状のCaOを用いた場合には70%まで低下した.走査型電子顕微鏡より,CaO-foamに被覆されたCaO粒子はCO_2吸収・脱離の過程で多孔質化していることが分かった.この構造がCaO粒子の表面積の低下を抑制し,CO_2吸収能を維持していると考えられた.
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