研究概要 |
リビングカチオン共重合により,ラジカル重合性基を有するポリ(4-ヒドロキシブチルビニルエーテル)共重合体を合成した。得られた共重合体水溶液は,分子量やラジカル重合性基の含有量にもよるが,合成した範囲内では,約42℃付近で高感度に温度応答した。この共重合体水溶液は,低温では透明,高温では疎水化して不透明であった。この白濁状態を光学顕微鏡で観察したところ,微小な液滴を形成していた。これらを低圧水銀灯を用いて254nmで光架橋し,ハイドロゲルミクロスフィアを得ることができた。そのサンプルは,液滴の状態と同程度の球状粒子であり,低温では,粒径が約700nmであった。興味深いことに架橋後も刺激応答性は保持しており,加温によって粒径は小さくなり,55℃では約250nmであった。 これらは,内部が疎水的な濃縮場であることが確認されたため,染料や香料をこの刺激応答性ハイドロゲルミクロスフィアに閉じ込めることができると考え,それらの持続的な放出だけでなく,温度等の環境変化(刺激)による放出が可能になると期待された。また,医療の分野においても,薬剤を体内の思い通りの場所まで運搬し,そこで刺激を与えれば,薬剤を放出するドラッグデリバリーシステム(DDS)に応用できると考えられた。そこで,水不溶性染料アゾ化合物を用い,温度による物質捕捉能を検討した。得られたハイドロゲルミクロスフィアを数時間攪拌し,UVを測定し捕捉量を算出したところ予想通り捕捉され,さらに昇温降温を繰り返すと可逆的に捕捉分離が行われることがわかった。以上のように,刺激応答性ナノカプセルの合成に成功した。 また,脂溶性ビタミンEを予めコアセルベートに濃縮することで,完全なカプセル化も可能であった。 これらのチューブ化として,アセアセトキシ基を有するポリマーを合成したところ,固体状態でらせん型チューブを観察することができた。
|