研究概要 |
本年度は,マイクロ波電気伝導度の実空間イメージングを行うための基本的な共振器構造を検討した.3次元電磁界解析シミュレーターを用い,通常の円筒型共振器,リエントラント型共振器,さらに金属探針を装着したリエントラント型共振器の3つの共振器について,電磁場空間分布を調べた.その結果,通常は正弦波的またはベッセル関数的に空間分布するマイクロ波電磁場が,金属探針プローブを用いることにより飛躍的に金属探針の先端部分に集中することが分かった.また,同様な電磁界解析から共振器のQ値は外部伝送路との結合損失を無視した場合,共振器内壁に超伝導体を用いれば,10万以上の高Q値化が可能である見通しも得られた.現在,これらの数値計算結果を基に1ミクロンの空間分解能を得るための金属探針プローブの詳細な設計を行っており,設計が終了次第、室温環境下で実空間イメージングを行うための試作機作製に着手する予定である.また,金属探針を用いるアイデアを同軸共振器にも応用し,同軸共振器外部へのエバネセント共振モードを応用した非接触誘電率測定を実証した.標準試料に対する測定結果と電磁解析シミュレーターによる数値計算を用いることにより,未知物質の誘電率が決定できることが分かった.最後に代表的な強相関物質であるLa_<2-x>Sr_xCuO_4高温超伝導体薄膜の超伝導相図における特異なキャリア濃度依存性の謎を解明するために,マイクロ波複素反射率からマイクロ波電気伝導度の周波数依存性を直接求める手法を用い,超伝導転移点近傍における超伝導揺らぎ伝導度を様々なキャリア濃度で測定した.その結果,相転移の普遍性クラスが最適ドープ組成近傍で急激に変化することが分かった.この振舞いは膜厚などのサイズ効果では説明困難であり,超伝導相図内部に量子臨界点が存在する可能性を示唆しているように思われる.
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