絶縁体である酸化マグネシウム基板上に強磁性鉄薄膜および酸化マグネシウム超薄膜を積層成長し、その構造と輸送特性の相関を調べた。薄膜の成長は分子線エピタキシ法を用いて行った。酸化マグネシウム基板上に酸化マグネシウム緩衝層を成長した後、強磁性鉄薄膜(膜厚50ナノメートル)を成長し、続いて酸化マグネシウム超薄膜を成長した。強磁性鉄薄膜および酸化マグネシウム超薄膜のエピタキシャル成長を反射高速電子回折により確認した。製膜後の試料を超高真空のまま走査型トンネル顕微鏡を備えたチャンバに搬送し、その表面構造を観察した。顕微鏡観察はタングステン探針を用い、室温、一定電流モードで行った。走査型トンネル顕微鏡による観察の結果、酸化マグネシウム絶縁膜の膜厚が3原子層から5原子層まで増加するに従い、表面の平坦性が増すことが確認された。また、製膜後の熱処理により、表面平坦性が向上することも確認された。これは、強磁性鉄薄膜/酸化マグネシウム超薄膜/強磁性鉄薄膜の強磁性トンネル接合において、熱処理によりトンネル磁気抵抗比が大きく上昇するという実験事実と一致し、この上昇が熱処理による界面構造の平坦化によるものであることを示唆している。さらに、酸化マグネシウム超薄膜の伝導特性を走査型トンネル分光により調べた結果、膜厚3原子層と5原子層の間に一様バリアが形成される臨海膜厚が存在することが分かった。これらの結果により、超平坦な表面有機強磁性層の創成へのてがかりを得ることができた。
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