本年度行った内容は、2項目ある。以下に、それぞれの研究で得られた知見を記述する。 (1)ナノシリコンバイオデバイスの作製条件とナノシリコンの粒子サイズ、粒子収量の関係 バイオデバイスに使用するナノシリコン粒子は、本研究で開発したプロセスにより製造した。具体的には、高周波スパッタリング法と熱処理により酸化膜内にナノシリコンを生成する。その後、フッ酸水溶液処理と超音波処理により、酸化膜をエッチングすることで、粒子状のナノシリコンを得ることに成功した。また、スパッタリング時の高周波電力とガス圧の条件を調査することで、1.9nm〜3.0nmの粒子サイズで高収量(〜3.0mg)のナノシリコン粒子の作製条件を見出した。 (2)粒子サイズ、粒子収量の異なったナノシリコンバイオデバイスの発光特性評価 (1)で製造したナノシリコン粒子を純水溶液内に分散させた。この分散溶液に、313nmのキセノンランプを照射することで、1.9nmのナノシリコン粒子から青色、2.2nmのナノシリコン粒子から緑色、3.0nmのナノシリコン粒子から赤色の発光をそれぞれ得ることに成功した。各色の発光輝度は、赤色から青色にかけて低下するものの、全色ともに肉眼で十分に認識できた。特に、赤色の発光輝度は、ナノシリコン粒子含有量3.0mg/mlの分散溶液で60cd/m^2を達成した。また、発光の安定性は、全色とも純水内で安定していた。 来年度は、本年度確立した高輝度でかつ安定した青色、緑色、赤色で発光するナノシリコン粒子を癌細胞内に貪食させ、その基礎特性(細胞組織反応性、毒性、発光輝度、発光の安定性)を実験により分析する。また、動物の冠動脈内での流動時における発光特性評価も行い、バイオデバイスとしての有効性について検討する計画である。
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