高品質高温超伝導体単結晶、主に劈開による薄膜作製が可能なBi2Sr2CaCu208+yへの位置制御された微細孔の導入、およびその磁束線物性評価を行った。今年度は、ミリングによる試料表面の過熱防止、ダメージ低減のため、30Kまで冷却可能な試料ホルダーをミリングチャンバー内に組み込んだ。この試料ホルダーは可動式であり、ミリングと物理加熱蒸着をin-situで行うことが出来る。現在試運転中であり、所望のスペックを満たす性能である事を確認した。微細孔の導入に関して、Focused Ion Beamを用いて正三角格子・正方格子・ハニカム格子・ランダム配置など、様々な対称性を持つ微細孔格子の導入を行った。正三角格子・正方格子・ハニカム格子など、面内対称性がある場合には、磁束液体相におけるマッチング効果の存在が、局所磁化測定・磁束線フロー抵抗測定から確認できた。一方、ランダム配置の場合には、磁束線フロー抵抗にマッチング効果は見られていない。まだ微細孔の密度・サイズ等に関して、系統的に研究できてないため、今後引き続き試料作製・評価を行う。また、貫通孔だけでなく、表面に数10nmのメッシュ状構造を導入する事に成功し、僅かな表面構造にもかかわらず非常に顕著なマッチング効果が、磁束線フローに現れる事を見出した。 今後として、準結晶の対称性を持つペンローズ格子の導入や、EBを用いたパターニング、陽極酸化アルミナテンプレートを用いたより微細な規則孔格子の導入に取り組み、磁束線フローを人工的に導入した構造によって制御することを目指す。
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