研究概要 |
昨年度、単一分子計測に要求されるスペックを満足するよう、設計と試作を進めてきたSTM-電場変調分光装置の信号処理部に、今年度はさらなる改良を加えてトータルのシステムアップを完了した。 具体的には、他の機器と連動してコントロールできるようプログラムした高速デジタルオシロスコープを信号処理部に組み込み、トンネル電流の波形をそのまま記録し解析ができるようなシステムにしたことで、昨年度までは、変調雷場に対する分子の応答信号が、電場の周波数と同期して現われるのかあるいは高周波に現われるのかということだけしか分からなかったが、今年度、変調雷場に対して分子が実際にどう応答するのかを、波形解析もあわせて詳細に調べることが可能になった。 また、基板上に固定された分子ばかりでなく、例えば動いたり構造変化を起こすなど、時間的に変化する系も将来対象としていくことを念頭に置いて、STMプローブのラインスキャンの行きと帰りで異なる周波数の応答成分を測定することができるよう制御プログラムに手を入れ、1回の2次元走査で、STMトポグラフ像に加え、変調電場に同期した応答,高周波の応答それぞれの分布像を撮れるようにした。 単一分子計測に向けた装置の準備はほぼ整ったと言って良く、後はデモンストレーションを通して本手法の威力を示すばかりである。
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