研究概要 |
我々のグループでは、これまでの研究でC_<60>分子を封入したグラファイト多層フィルムの合成に成功し、限り無くゼロに近い最大静止摩擦力と動摩擦力を示す事を発見した。本年度は、カーボンハイブリッド材料の機械特性を計算するプログラムの開発に着手し、その予備計算を行った。 先ず有限サイズのグラフェンシートに単一のC_<60>分子が挟まれる系を考え、グラフェンの層間距離を徐々に縮めたところ、層間距離が1.3nmの時に最適な構造となる事を予備的な分子力学計算により明らかにした。これは我々の実験で得られた透過電子顕微鏡像が示す層間距離と非常に良く一致した。(トライボロジスト49,553(2005)) 次に本プログラムを、グラファイト表面に付着したカーボンナノチューブ(CNT)を基板から引き剥がす「原子サイズの引き剥がし」のシミュレーションに適用した。198個の炭素原子から成る長さ40Åの(3,3)アームチェアタイプの単層カーボンナノチューブ(CNT)を剛体の単層グラフェンシートの上に吸着させ、CNTの一番端の位置を鉛直上方へ引き上げる計算を行った所、CNTの線接触から点接触への遷移を反映する力曲線が得られた。(e-J.Surf.Sci.Nanotech.4,133(2006)) 更に本プログラムを、グラフェンシート[0001]面に平行な方向に周期的境界条件をかけて、グラファイト/C_<60>単層膜/グラファイト構造の最適化を行うように拡張したところ、層間距離が1.31nmの時に安定構造を取り、先の予備計算を支持した。次年度は本プログラムを元に様々なモードでグラフェンを走査してC_<60>分子の原子レベル素過程を調べる予定である。 グラファイト上のグラファイトフレークの動力学が、平坦な相互作用ポテンシャルに基づく超潤滑性を示す事も見出した。(Solid State Commun.136,51(2005))
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