超撥水コーティングは、屋外環境では耐久性が低いため、限定的な利用に限られていた。しかし、閉鎖系では、耐久性を低下させる因子への接触が少ないことから、超撥水の利用に大きな展開がある。また、超撥水コーティングを施した固体表面上では、液滴は、クーロン力や不平等電界により運動が支配されることが知られている。閉鎖系における固体表面への超撥水コーティングと液滴の電界制御を用いることで、液滴の運動を利用した応用デバイスを製作することを進めている。 本年度は、平面状の超撥水表面における、液適量(μl)・電位差(v)・周波数(Hz)の間の基礎的知見の取得に努めた。超撥水表面サンプルは、ベーマイト昇華法によりパイレックスガラス上に、ラフネス構造を作製し、FASI7:CF_3(CF_2)_7CH_2CH_2Si(OCH_3)_3をCVD法でコーティングすることで、作製した。超撥水表面上で電位差を発生させるために、ハイボルテージ・シーケンサーに接続された電極(間隔:10mm)の上に、超撥水表面サンプルを配置した。今回は、電圧差(AC 3000〜6000v)と周波数(AC 1〜3Hz)の間の条件で、液滴(40μl)の移動性を確認した。また、等間隔・平行な3本以上の電極上に超撥水表面サンプルを設置し、各電極のチャンネルをON/OFFさせて電位差を発生させ、電位の低い方向に液滴が一定の速度で移動するように制御することを、試みている。また、リング状円筒管に気体を供給・排出する機構を持たせるための逆流防支弁を設置することや、円筒管サイズ(管の内径・リングの径)と電極の配置を考慮し、マイクロポンプの試作機を設計中である。 来年度は、今年度の基礎的知見を元に、超撥水コーティングと液滴の電界制御による運動を用いたマイクロポンプを、実際に試作する。
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