研究概要 |
超撥水コーティングは、屋外環境では耐久性が低いため、限定的な利用に限られていた。しかし、閉鎖系では、耐久性を低下させる因子への接触が少ないことから、超機水の利用に大きな展開の可能性がある。超撥水コーティングを施した固体表面上では、液滴は、クーロン力や不平等電界により運動が支配されることが知られている。閉鎖系における固体表面への超撥水コーティングと電界制御による液滴の運動を組み合わせることで、液滴の運動を利用した応用ディバイスの製作のための基礎的知見を蓄えることに勤めた。 まず、平面状の超撥水表面における、液適量(μl)・電位差(v)・周波数(Hz)の間の関係を明らかにした。超撥水表面は、2種類の方法(1:ベーマイト昇華法によりパイレックスガラス上に、ラフネス構造を作製し、FAS17:CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3をCVD法で作製、2:テフロン粒子を塗布することにより作製)で作製したものを用いた。 ハイボルテージ・シーケンサーに接続された電極(間隔:1〜10mm)により、超撥水表面上で電位差(電圧差:AC3000〜6000v,周波数:AC1〜3Hz)を発生させ、液滴(10〜40μl)の運動を観察した。 さらに、気体を供給・排出する機構(マイクロボンプ)の開発を行った。リング状円筒管の内部を超撥水コーティングし、電界制御により駆動力を得た液滴により気体を押出すことで実現する。逆流防支弁を設置することや、円筒管サイズ(管の内径・リングの径)と電極の配置も、検討した。 本研究は、超撥水性表面上の液滴を電界制御で運動させる、応用ディバイス設計への方向性を与えた。安定した流量を得るには、液滴の回転運動をさらに安定させることが求められることから、リング状円筒管のような曲面を均一にコーティング方法(特に均一なラフネス構造)の改善が、今後の課題として与えられた。
|