本研究では、波長2-20nmの軟X線領域で使用する2面反射結像系において、従来のシュワルツシルト光学系で必要である100nmのアライメント精度を緩和し、偏心に鈍感な新型光学系の設計解を得ること、および、新型光学系を試作し可視域で結像性能を検証することを目的とする。今年度は、収差論を用いた設計解の大域的な探索手法の開発を行った。具体的には、回転対称非球面からなる2面反射鏡に偏心が存在する場合の収差特性を3次の範囲で解析的に導出した。2面反射鏡では、結像光学系で必要な収差補正(球面収差、コマおよび非点収差)を行うと、偏心収差を含めた残留収差は、1つ設計パラメータで表現できる。実用的な設計解の探索を容易に行うために、2面鏡で必ず発生し結像特性やスループットに大きく影響する瞳の中心遮光量をただ1つの設計パラメータとした収差特性の表現を得た。これにより、瞳の中心遮光量が小さい高スループット条件下で、偏心に鈍感な設計解を大域的に探索することが可能となった。次に、導出した収差表現を用いて、波長13nm、倍率50倍および開口数0.25の条件下で、新規解の探索および新型光学系の設計を行った。その結果、設計波長での回折限界結像である30nmの空間分解能が得られる、3つの新しい非球面設計解を見出した。これらの新規解では、従来光学系と比較して、アライメント精度を最大で50倍に緩和できる。新型光学系の試作では、得られた設計値をもとに反射鏡の作成に着手した。
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