本年度は、中赤外領域(5〜10μm帯)において、高速広帯域波長制御可能なコヒーレント中赤外光源の構築を主目的に研究開発を行ってきた。 1.2μm帯励起波長同調によるコヒーレント中赤外光源の開発 非線形光学効果を用いた従来の中赤外光発生では、結晶角度同調や温度同調により波長制御を行っていた為、ウォークオフ角やパスずれ、フレネルロスにより変換効率が減少する点が課題に挙げられる。しかし、本研究で設計・開発を行った「高速広帯域ランダム波長同調中赤外コヒーレント光源」は、非線形光学結晶固定のまましかも高速に波長制御を行うことが出来、これらの課題をクリアできる。開発した中赤外光源は、大きく分けて2つのコンポーネントから成る。(1)ガルバノ制御2μm帯励起光源部:共振器内に2つのKTP結晶を配置した、1.064μm励起の2μm帯励起光源であり、チューニングレンジ1.8〜2.5μmを有する。KTP結晶角度はガルバノスキャナ制御であるので、精密かつ再現性良く高速に励起波長をコントロールできる点が大きな利点である。(2)結晶角度固定中赤外光源部:非線形光学結晶にはZnGeP_2(ZGP)を用いた。(1)の励起光源が高速制御可能な為、ZGP結晶角度同調が不要で、格段に高速で再現性の良い中赤外光発生の自動制御が可能となった。中赤域のチューニングレンジは5.5〜9.2μmを有し、この範囲でランダムアクセスおよびスキャニングが可能である。システム自体は1kHz応答が可能であるが、現在は使用するレーザの繰返し周波数により制限されている。 2.励起波長高速同調可能な中赤外光源の高出力化 ガルバノスキャナにより2つのKTP結晶を自動制御している為パスずれの補正はもとより、これと同時に2μm帯励起光源の高出力化が実現できる。現在では〜55mJ/pulseを得ており、高出力化に成功している。今後、後段のZGP-OPOの出力も高出力・高効率化が期待出来る。
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