研究課題
本年度は2次元フォトニック結晶スラブ中の超高Q値点欠陥共振器の光子寿命測定と、点欠陥共振器への光パルスの導入・保持法の確立を目指して研究を行った。(1)昨年度作製した世界最高レベルの点欠陥共振器(Q値"100万)に対して、300ps程度の光パルスを結合させ、その後の共振器からの放射光強度の時間変化を測定した。光子寿命として最大で1ns程度のものを測定することに成功し、ナノ秒レベルの光子保持が可能であることを実証した。(2)光パルスの導入・保持法として、共振器と外部との結合の動的変化を検討した。結合を変えるには、共振器に併設した導波路の片端に完全反射面を設けたとき、そこから反射されて共振器に戻ってくる光の位相に応じて共振器と導波路の等価的な結合が変化することを利用した。反射光の位相を0からπまで変化させると、結合の大きさが反射がない場合の2倍から0倍までの間で変化する。理論計算の結果、反射光の位相を0に調整して導波路と共振器の結合を強くした状態で光パルスを導波路から入射し、共振器にパルスが入ったタイミングで反射光の位相をπに変化させることで、光パルスを効率よく共振器に導入し、かつ、その後共振器から逃さないようにできることが分かった。(3)Siスラブをもちいて上述の構造を作製し、実験を行った。反射位相の制御手法としては、ピコ秒程度の制御光パルスを導波路部分に吸収させてキャリアを生成し、そのプラズマ効果で屈折率を下げて伝搬位相を変化させる方法をもちいた。制御光パルス強度を反射位相がπ変化する量に設定し、それに同期させてピコ秒程度の信号光パルスを導波路から共振器に入射した。そのとき、共振器から上方の空間への放射パワーが増加する様子が観測された。これは、共振器に効率的に信号光パルスが導入され、かつ、その後入射導波路側に戻らなくなったたためであり、これにより結合の動的制御による光パルスの導入・保持の基本動作が実証できた。以上の成果により、本研究では光子保持デバイス実現のための基礎を築くことができた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (7件) 産業財産権 (1件)
Journal of Physics D : Applied Physics Vol.49,No.9
ページ: 2629-2634
IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics Vol.12,No.6
ページ: 1123-1134
Applied Physics Letters Vol.88,No.151102
ページ: 1-3
Japanese Journal of Applied Physics Vol.45,No.8A
ページ: 6078-6086
New Journal of Physics Vol.8,No.209
ページ: 1-12
ページ: 6096-6102
Optics Express Vol.14,No.8
ページ: 3491-3496