研究課題
本研究では、情報理論的セキュリティに基づく暗号鍵発生方式を提案し、超高速レーザカオスを用いてこれを工学的に実装することを目的とする。以下に本年度の主な成果を示す。(1)共通カオス信号による半導体レーザ間のカオス同期実験本研究では相関乱数暗号の要素技術として、共通カオス信号により駆動された半導体レーザカオス同期を実験的に実現した。駆動用レーザ(Drive)において、外部鏡を用いて戻り光を付加することでカオスを発生させた。次に、Driveの光を2つの受信レーザ(Response)に注入し温度制御を用いて光周波数差を精密に制御することでインジェクションロッキングを達成させた。ここで緩和発振周波数をDriveとResponseで異なる値に設定し、Drive-Response間および2つのResponse同士の時間波形を測定してカオス同期の観測を行った。その結果、2つのResponse同士では精度の高いカオス同期が達成されたが、DriveとResponse間ではカオス同期精度が低いことが確認できた。またResponseの緩和発振周波数の変化と光周波数差の変化に対する相互相関関数を調査したところ、広いパラメータ領域において2つのResponse間の同期精度がDrive-Response間の同期精度よりも高いことが明らかになった。これらの結果はシミュレーションにおいても再現された。以上のように、駆動用カオス信号と同期したカオス信号との相関が低い場合、駆動信号を用いたカオス信号の推定が困難となり、暗号鍵配送方式として有用となり得る。(2)カオス同期した半導体レーザ間における相関の制御2つのResponseレーザに外部鏡を設置し、Responseレーザにおける戻り光の位相を変化させることで、同期したResponse波形間の相関の制御を行った。精密なX軸ステージを用いてResponseレーザの外部共振器長を波長オーダーで変化させた場合、戻り光の位相が変化し、カオス同期の精度が変化した。特に波長の距離の変化に合わせて同期精度が周期的に変化することが実験的に明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (15件)
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