研究概要 |
非線形フォトニック結晶における波長変換素子の定量的な実証研究が、大きな期待が持たれながらも、進んでいなかった最大の理由は、LiNbO_3などに代表的される高非線形性材料の難加工性にあり、2次元フォトニック結晶のようなナノレベルの極微細構造を高精度に作製することが困難であったためである。この課題を克服すべく、初年度である17年度は、非線形2次元フォトニック結晶素子の高精度な作製技術開発をまず重点的に行った。 その結果、最も代表的な高非線形性光学材料であるLiNbO_3単結晶を用いて2次元フォトニック結晶導波路を創製することに世界で初めて成功した。本研究は、非線形材料層とフォトニック結晶スラブ層を分離する独自の縦型ヘテロ素子構造を提案し、さらにLiNbO_3単結晶を光波長スケール(数100nm)まで薄膜化する独自研磨技術を確立することで、この技術的障壁を解決した。 さらに引き続き、作製に成功した2次元LiNbO_3フォトニック結晶素子が光学的に優れた特性を有しているのか明らかにするため、素子の光バンド構造、及び第二高調波特性を実験的に評価した。その結果、理論計算と良く一致する光バンド構造が形成されていることが分かり、またレーザ光と物質の間の相互作用を大きく増幅させることにより、反射配置での第二高調波発生を高効率化(300倍以上)することに初めて成功した(PECS-VI、ICIM'05等で発表)。これは新たな高効率波長変換技術を導くものであり、実用レベルの超小型、高効率・波長変換素子実現への道を拓く成果である。本年度実証した技術を発展させ、来年度は長距離・面内導波型の位相整合と電場増強効果の同時達成させた高効率フォトニック結晶波長変換素子実現を目指し、フォトニック結晶による非線形増大素子が従来デバイスに対して,ロス等を含め実際上どれだけ有利なのかを定量的に明らかにしていきたい。
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