人工的な光ナノ構造である「フォトニック結晶」の中では、光の極めて遅い群速度(スローライト)や特異な光分散関係が実現できる。本性質を利用すれば、光と非線形性物質との相互作用を人為的に制御し、非線形光学応答の大幅な増強を実現できる可能性がある。しかしながらこれまで、LiNbO_3に代表される高非線形性結晶の難加工性が原因で、産業的活用が期待されながら実験研究による定量的な検証は進んでいなかった。本研究は、フォトニック結晶機能と高非線形性光学結晶とを融合させる非線形フォトニック結晶を創製し、第2高調波発生などの非線形光学特性と特異な光分散関係(群速度等)との相互関係を定量的に検証することによって、光非線形物質機能の新たな高度制御技術の確立、従来素子性能を凌駕する超小型・高性能な波長変換コヒーレント光源素子の開発を目指した。 非線形フォトニック結晶における波長変換素子の定量的な実証研究が、大きな期待が持たれながらも、進んでいなかった最大の理由は、LiNbO_3などに代表的される高非線形性材料の難加工性にあり、2次元フォトニック結晶のようなナノレベルの極微細構造を高精度に作製することが困難であったためである。17年度の研究において、最も代表的な高非線形性光学材料であるLiNbO_3単結晶を用いて2次元フォトニック結晶導波路を創製することに世界で初めて成功した。 平成18年度は、本技術で作製された非線形フォトニック結晶を用いて、レーザ光と物質の間の相互作用を大きく増幅させることにより、第二高調波発生を高効率化することに成功した。さらに実証した素子を発展させ、面内導波タイプの位相整合を達成した素子を実現し、肉眼において確認できる紫外コヒーレント光源素子を実証した。当該研究において実証した高非線形2次元フォトニック結晶の開発成功は、国内はもちろん世界的にも例がなく、まったく新規な試みであり、新たな研究領域の開拓を可能にするもので、学術・工業両面において非常に高い重要性、今後の発展性をもっている。
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