中性子共鳴スピンエコー法では共鳴スピンフリッパーによってスピンアップ・ダウン状態間に波数差をつけ、スピンフリッパー間を飛行する間に位相差を蓄積する。スピンフリッパーに適用する振動磁場の周波数が高い程波数差は大きくなり、装置のエネルギー分解能は向上する。今年度は次のような成果を得た。 1 スピンフリッパーを高周波化させた。500kHzを超える周波数で駆動する共鳴スピンフリッパーを開発した。振動磁場を効率よく発生させるコイル・電源や、振動磁場と共鳴条件を満たすための静磁場を発生させるコイル・その冷却システム等を構築した。中性子を用いた実験ではスピン反転率85%以上を得ている。 2 J-PARCなどパルス中性子源に対応させるため、フリッパーを白色パルス中性子ビームに対応させた。振動磁場の振幅を波長に応じて変調させ、0.3nmから0.7nmまでの幅広い波長の中性子をスピン反転させることに成功した。 多層膜を用いた冷中性子干渉計は長波長中性子を利用でき、微小相互作用を検出するのに有利である。装置の大型化と、基礎物理への応用をめざし、次のような研究を行った。 1 ビームライン日本原子力研究開発機構JRR-3M C3-1-2-3 MINE2での干渉縞の安定性を検証し、位相決定精度1/3000周期が得られた。Aharanov-Casher効果の精密測定に必要な統計精度など重要な知見を得た。 2 J-PARCなどパルス中性子源に対応させるため、ビームを分割・重ね合わせするデバイス「ビームスプリッティングエタロン」の白色中性子対応を検討・準備した。
|