中性子共鳴スピンエコー法では共鳴スピンフリッパーによってスピンアップ・ダウン状態間に波数差をつけ、スピンフリッパー間を飛行する間に位相差を蓄積する。スピンフリッパーに適用する振動磁場の周波数が高い程波数差は大きくなり、装置のエネルギー分解能は向上する。今年度は次のような成果を得た。 1 高周波化させた共鳴フリッパーを用いて実効1MHzのMIEZE型スピンエコー分光装置を構築した。分解能を示すフーリエ時間は1.7nsecであり、MIEZE型としては世界最高である。 2 安定的に動作させるためにフリッパー形状を最適化した。実効110kHzから600kHzまでMIEZEを安定して測定できる。現在この装置を用いた物性実験を開始している。 3 高分解能スピンエコー装置に対するビーム発散補正法を検討した。フリッパー間で蓄積される位相差はビームの入射角によってばらつく。これを補正する磁場形状を提案し、シミュレーションによってその可能性を示した。 多層膜を用いた冷中性子干渉計は長波長中性子を利用でき、微小相互作用を検出するのに有利である。装置の大型化と、基礎物理への応用をめざし、次のような研究を行った。 1 ギャップ200μmのビームスプリッティングエタロンを用いた干渉計の光学経路を詳細に調べた。 2 ビームスプリッティングエタロンを白色中性子に対応させるには、中性子ミラーをスーパーミラー化する必要がある。干渉計構築にはより低磁場で磁化する磁性体ミラーが必要だが、蒸着とイオンビームスパッタ法を用いてスーパーミラーを作成し、中性子反射・磁化特性を調べた。
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