研究概要 |
Casimir力は量子効果により発生する微小な力である.本研究では微小なシリコンカンチレバーをCasimir力により変位させ,かつ,その動きを光照射により変化させることを目指している.Casimir力で作動するカンチレバーは,大面積かつ低ばね定数を有していることが必要条件である.今回,従来より10倍以上軟らかいCasimir力用プローブの作製することができた.しかし,その極めて小さなばね定数のため,基礎振動や空気外乱の影響を大きく受け,大気中での測定は困難となった.そこで,真空中での測定を目指し予備実験を行い,実験装置の改良に着手した.従来法とは異なり,Casimir力によるカンチレバーの共振周波数の変化をロックインアップ(NF回路ブロック: LI5630)を利用して測定することとした.また,自作したカンチレバーのインピーダンスが光照射によりどのように変化するかをLCRメータ(Agilent : E4980A)により測定した. 理論的な解析として,Casimir力によるシリコン内の分極について考察した.半導体のキャリアは拡散により表面に移動できるが,通常は分極による静電エネルギーの上昇ため,そのような過程は自発的には起こらない.しかし,Casimirカエネルギーと分極による静電エネルギーのエネルギーバランスを考えた場合,表面にキャリア集中することによりCasimirエネルギーが低下するため,自発的な分極が起こり得ることを示した.
|