結晶と相対論的荷電粒子の相互作用によるX線放射現象であるパラメトリックX線放射 (PXR)の特性を調べるため、前年度に引き続き日本大学電子線利用研究施設で開発された2結晶型PXR発生装置からのX線ビームの空間プロファイルと時間構造を調べた。空間プロファイルの一様化は、ターゲット結晶内での電子多重散乱によるものと考えられ、反射用の第2結晶での回折曲線も含めてモンテカルロ計算とおおむね整合する。しかしながら、単純な運動学的な描像に基づく光線追跡では第3結晶回折後の均一性の説明が困難であり、PXRを用いて回折強調型の位相差イメージングが可能となっている実験結果とは整合しない。これらの結果は、PXRの波面形成についてより本質的な研究の必要性の示唆している。 また、小型のNaIシンチレータと光電子増倍管を組み合わせて数10ns程度の時間分解能のX線検出器を製作し、PXRマクロパルスの計測を行った。その結果、パルスの前半と後半では第2結晶回折曲線の振舞いなどで違いが認められた。原因として電子ビームのパルス内での変動や、ターゲット結晶が受ける熱衝撃の影響が考えられる。電子ビームの集束条件に強く依存する傾向が見られ、パルス前半のみX線が強くパルス後半の電子ビームの寄与が少ない状況が生じることが判明した。この状態ではPXRの点光源性が高まり、エネルギー分解能やX線イメージの解像度が向上するという結果も得ている。これらの成果より、PXRの品質の電子ビーム集束条件への依存性が確認されるとともに、リニアックのようなパルス駆動型の加速器を用いる場合においてはパルスの時間構造の最適化が重要となることが明らかになった。
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