研究課題
本研究では、磁場による、弱磁性物質を中心とした材料プロセスの制御に関して、物質流れの可視化や、組織形成のその場観察を行うことにより、基礎的な知見を集積し、体系化することを目的とする研究を実施した。平成17年度は、高磁場中材料プロセス可視化システムの開発、それを用いた材料プロセスの高磁場中その場観察を実施した。流体の流れを可視化する方法として、シャドウグラフ法を採用し、水のベナール対流に対する磁場効果を可視化により評価することに成功した。印加する磁気力の方向に依存して、水の熱対流の開始が促進・抑制されることを見出した。また、共焦点レーザースキャン顕微鏡を10T程度の強磁場中で使用できるアタッチメントの使用により、磁場方向と平行な方向から、2次元の試料を観測することを可能にした。この観測系の分解能を評価するため、833nm幅のラインとブランクが交互に並ぶテストパターンの観測を行なったところ、明瞭に分解して観測することができた。これは、現時点で、磁場中において光学的可視化により得られる最高の分解能である。さらに、これを用いて、銀の無電解析出における析出結晶の形態に対する磁場効果の機構を評価した。銀の無電解析出では、通常、形成される樹枝状の結晶形態が、疎で長さの異なるパターンとなるが、磁場中では密で長さの揃った形態へ劇的に変化する。成長末端の直接その場観察の結果から、ある程度の長さまで樹枝が成長した後に、急激に樹枝のある長さが一体となって屈曲する様子が観測された。この結果から、銀が無電解析出する際の電子の授受に伴い、樹枝中を流れる電流によって、樹枝にローレンツ力が作用したことが原因となって、劇的な形態変化が観測されたことが明らかとなった。以上のように、2通りの方法で、磁場中現象の可視化を可能にし、材料プロセスへの磁場影響評価に利用することができた。
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