本研究では、磁場による、弱磁性物質を中心とした材料プロセスの制御に関して、物質流れの可視化や、組織形成のその場観察を行うことにより、基礎的な知見を集積し、体系化することを目的とする研究を実施した。平成18年度は、前年度に開発した高磁場中現象その場観察システムを用いた材料プロセスの可視化により。この検討を行なった。シャドウグラフ法による流体の流れの可視化では、水のベナール対流を対象として、印加する磁気力の方向に依存して、熱対流の開始が促進・抑制されることを確認した。また、水の磁化率の温度依存性により、熱対流の促進・抑制挙動が異なることを見出した。これらの結果から、広い温度領域で磁気力による水の熱対流制御を体系的に理解することに成功した。また、サブミクロンの分解能で強磁場中現象のその場観察を実現する強磁場中レーザースキャン顕微鏡システムは、現時点で、磁場中において光学的可視化により得られる最高の分解能である。これを用いて、いくつかのセラミックスファイバーの配向過程のその場観察から、磁気的異方性による磁場配向現象の解析を行なった。その結果、媒体粘度やファイバー長をパラメータとして、統一的に磁場配向現象の記述が可能であることを明らかにした。 以上のように、本研究では、いくつかの方法で、磁場中現象の可視化を可能にし、弱磁性物質の物質流や材料プロセスの磁場制御に関する知見を得ることが出来た。これらの知見は、今後の材料プロセスへの磁場利用において有益な情報となると期待される。
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