研究概要 |
本問題において従来の計算法である積分方程式法解法では,離散化された係数行列が密な連立1次方程式の反復解法における行列-ベクトル積(放射波動場)計算がボトルネックである.この計算に対する高速・高効率化を目標に研究に取り組んだ.今年度の成果の概要を下記に要約する. 1.高速多重極アルゴリズム(FMA)を用いた2次元放射波動場(行列-ベクトル積)計算の並列化 2次元問題において研究代表者がすでに提案したFMAに対して,そのデータ構造およびデータフローに特化し,かつ簡素な並列化手法を提案した.Message-Passing Interface(MPI)での実装による性能評価ではアルゴリズム全体の90%以上を並列化させることに成功した. 2.FMAを用いた2次元電磁波散乱問題の高精細近傍界計算 研究代表者が提案したFMAはすべての周波数領域において高精度計算が可能である.これを利用して散乱波の高精細近傍界計算を実現させた.これにより,物体間の電磁波の相互作用(多重散乱現象など)を詳細に解析することが可能となり,新規の理論構築への発展が期待できる. 3.3次元FMAに向けたダイアディックグリーン関数の多重極展開の級数表現の提案 3次元問題においてすべての周波数領域において高精度計算が可能なFMAの提案に向けて,積分方程式の核であるダイアディックグリーン関数の級数による多重極展開表現を提案した.ただし,単純な数値計算では値が発散すること,そして膨大な計算時間を要する.これらの点を克服することが急務であり,現在,解決法を模索している.
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