研究概要 |
シミュレータの応用および高速,並列処理化に向けた今年度の成果の概要を下記に要約する. 1.高速多重極アルゴリズムと多重散乱現象に基づく繰返し解法の併用法(FMA+IPNM)の並列化 FMA+IPNMは研究代表者が昨年度提案したものであるがその並列化に問題が残った.今年度はFMAのデータ構造(木構造)に着目し,重複を許可する部分木構造を各プロセッサに配置させ,プロセッサ間のデータ通信量を軽減させる手法を提案した.以上により,疎に分布する場合において並列処理のスピードアップがプロセッサ数を超える例が現れた.このことは大規模問題の求解の並列処理においてアムダールの法則に記述される問題点を克服する可能性を示しており,10万個を超える物体を容易に扱える実用的なシミュレータの開発を可能にさせる大変意義のある結果である. 2.新しい反復解法:IDR(s)法の性能評価と前処理つき算法の提案 2007年にvan Gijzenが従来とは全く異なるアプローチから連立1次方程式の新しい反復解法を提案した.研究代表者は九州大学情報基盤センター藤野教授のグループと共同で前処理付きの算法の提案および本研究課題で扱う複素完全密行列に対する性能評価を世界に先駆けて実施した.結果,従来の主要反復解法に比べメモリ量は最大40%,収束性は25%以上優れていることを示した.このことは限られた計算機資源において扱う問題の規模を拡大させることができる.
|