研究概要 |
本研究では,整合界面を構成する種々の格子構造について「第一原理格子不安定解析」を行うことにより,界面転位発生の臨界ミスフィットの評価や第三元素添加による界面安定化など,2相整合耐熱超合金の界面原子構造設計につながる重要な知見を,電子レベルから精密に評価することを目的とする.本年度は,まず基本となるNiおよびNi_3Al単結晶の格子不安定条件について検討するため,[001]方向の単軸引張・圧縮,および,静水圧引張・圧縮を与える第一原理分子動力学計算を行い,各変形状態下の格子不安定性を弾性剛性係数の正値性に基づき議論した.Ni,Ni_3Alのいずれも,[001]単軸引張では横方向非等方変形に対する不安定分岐(Born不安定),[001]単軸圧縮および静水圧引張では構造変化に対するSpinodal不安定が最初に現れた.理想的な静水圧圧縮では,格子不安定となるひずみは存在しないが,対称性が崩れるとSpinodal不安定が現れる.これらの格子不安定点から定まる理想強度を主ひずみおよび主応力面上で"降伏曲線"として示した.単軸引張・圧縮,および,静水圧引張ではNi,Ni_3Alの理想強度はひずみ・応力いずれも大きな差はなく,横方向拘束下の引張や圧縮で差を生じることなどが明らかとなった.さらに,Ni,Ni_3Al格子への第三元素添加の効果について検討するため,B,Cr,Wを添加した系の第一原理解析を行い,平衡格子定数,弾性係数および電子構造変化などについて議論した.平衡格子定数の変化から,Bを両相に添加したγ/γ'界面が最も小さい正のミスフィットを,Wをγ相に,Crをγ'相に添加したγ/γ'界面が最も小さい負のミスフィットを生じることが示唆された.
|