研究概要 |
マグネシウム系耐腐食アルミニウム合金(JIS:5083)の表面にレーザー出力密度,レーザー走査速度および照射ライン間隔を変えてレーザーピーニング処理を行い,SEMによる表面観察およびX線回折を用いた残留応力測定を行った.すべての試料においてレーザーピーニング痕の中央部にアルミニウムが溶融した形跡が見られた.また,2つのピーニング痕の間に多くの微細クラックが発生していることも明らかになった.したがって,レーザーピーニング痕の間に大きな引張残留応力が発生していることが推察される.次にX線回折を用いた応力測定の結果,レーザー出力密度が31MW/mm^2のとき,走査速度が0.5mm/sから2.0mm/sの間,そして,走査ライン間隔が細密(0.1mm)のとき,アルミニウム合金表面に最大圧縮残留応力が発生することが分かった.また,レーザー走査方向の残留応力よりもレーザー走査方向に対して垂直方向の残留応力の方が約50MPa圧縮側に大きくなることが分かった.さらに,高輝度光科学研究センターの大型放射光施設SPring-8の高輝度X線を用いてレーザー痕の応力分布測定を試みた.公募によるビームタイムの申請に外れたために,別の申請課題での実験の合間に実施した.レーザーピーニング痕の直径が約Φ0.5mmに対して,入射X線は0.1mm×0.1mmまで絞って残留応力測定を行った.X線照射位置を正確に把握するために,レーザーピーニング痕にシリコン粉末標準試料を充填し,シリコンからの回折を調べた.最終的には,十分な実験時間が確保できなかったため,現段階ではレーザーピーニング痕の応力分布測定法を確立するだけにとどまった.
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