研究概要 |
マグネシウム系アルミニウム合金(JIS:A5052)表面にレーザピーニング処理を行い,レーザのアブレーションによる表面形状変化の測定,レーザの集光エネルギによる表面の形態変化の観察,X線回折を用いた内部応力測定を行った.レーザピーニング処理にはYAGパルスレーザの第二高調波を用いた.はじめに,微小領域にレーザピーニングを施すときに問題となるレーザ入射角度の影響を調べた.レーザパワー密度とカバレージ(単位面積あたりのレーザショット数)を一定にして試料面法線とレーザ入射の成す角度を0°から60°まで変化させてレーザピーニングを行った.レーザ入射角度を増加するに従って1発のレーザ照射領域が円から楕円へと変化し,照射面積がレーザ入射角度の違いによって異なる.したがって,レーザパワー密度とカバレージが一定になるようにレーザのパワーと走査速度を変化させた.これらの実験より,ピーニング表面に発生する圧縮内部応力は,レーザ入射角度の変化よりもレーザパワー密度やカバレージに大きく依存することが明らかになった.次に大型放射光施設SPring-8の高輝度X線を用いて,1ショットで形成されるピーニング痕の内部応力分布測定を試みた.1発のピーニング痕の大きさは約500μmであり,X線を100μmに絞ってピーニング痕内5箇所の内部応力測定を行った.内部応力の測定位置を正確に捉えるためにレーザアブレーションにより形成されたくぼみにシリコン標準粉末を充填し,シリコンの回折を見つけることでX線の照射位置を把握することに成功した.本実験では,X線回折面法線と試料面法線を一致させずに測定を行ったので,すべての測定位置でほぼ0の応力が測定された.測定方法の改善と楕円形状のレーザピーニング痕の内部応力分布測定の計画を準備したが,SPring-8の利用制限により確かめることはできなかった.
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