研究概要 |
本年度の研究実績は下記の3項目に大別される. (1)第一原理計算による結晶安定構造解析とその物性評価 優れた圧電応答を示すペロブスカイト型結晶構造の安定構造と物性を密度汎関数法により解析した.本年度は,対象材料として結晶構造の物性が評価できる良質な単結晶体の創製が可能で,物性の実験計測値が豊富であるチタン酸バリウムを採用し,弾性スティフネス定数,誘電率および圧電応力定数を評価した.また,単結晶体の実験値と比較することで,安定構造および物性計算値の妥当性を確認した.さらに応用展開として,基板による結晶構造制御を想定し,圧電特性に及ぼす格子定数変化の影響を調査し,圧電特性を最大で約50%向上できることが判明した. (2)ドメイン・スイッチングおよび構造相転移を考慮した熱・圧電弾性非線形問題の均質化法定式化とこれに基づいた有限要素解析プログラムの開発 ドメイン・スイッチングと構造相転移を考慮した熱・圧電弾性非線形問題に対して均質化法の定式化を行い,これに基づく有限要素解析プログラムの開発に着手した.具体的には,微視構造の結晶粒に対する速度形構成則に自発ひずみ(構造相転移ひずみ)および自発分極とスイッチングによる結晶方位変化を導入し,Updated Lagrange形式の非線形有限要素解析法を研究した. (3)ピエゾメータによる圧電特性評価実験 本年度に導入されたピエゾメータを用いて,チタン酸バリウムおよびチタン酸ジルコン酸鉛の圧電特性評価実験を実施した,また,同材料に対してLCRメータを用いた共振・反共振法による圧電特性評価実験も併せて実施し,測定値の妥当性を確認した.さらに,分極状態の異なる圧電試験片を作成し,AFMによるミクロ分極観察と上記のマクロ圧電特性の関係を調査し,トリプルスケール解析のための基礎データを得た.
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