研究概要 |
本年度は,実験装置の開発・改良を行い,高張力鋼板(以下,ハイテン板)の複雑変形履歴を解明する為の材料試験を以下に示すように行った. (1)二軸引張り試験装置を用いたハイテン板の初期降伏曲面の実験観察. 得られた結果は概ね良好であり,ハイテン板の降伏曲面や後続降伏曲面の検討が可能になった. (2)圧延方向に対し種々の方向に切り出したハイテン板の単軸引張り試験,繰り返し面内反転試験による応力-ひずみ関係の実験観察. 複雑な変形履歴をハイテン板に加えることが可能になった. (3)従来の塑性理論を用いた数値シミュレーターの開発. 得られた結果は本研究で提唱しているマクロ塑性理論(Yoshida-Uemoriモデルを用いること)で再現できることを確認した. (4)材料のメゾ領域でのより詳細な検討をする必要があるため,上記実験結果に対応する結晶塑性シミュレーターの開発. より詳細な検討を行うためにはハイテン板の初期結晶方位を実験的に得ることが可能なEBSP装置を使用する必要がある.上記装置は本年度本格的に使用する予定である. 本年度は実験装置の開発・改良を主に行った.最終年度となる本年度は,結晶塑性理論による塑性異方性(特に集合組織および変形誘起異方性形成過程)についてより検討を深めたい.
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