研究概要 |
高張力鋼板成形技術設計開発期間の大幅な低減を実現可能とする汎用数値シミュレータを構築した.特に本研究では,高張力鋼板の二軸塑性変形挙動や面内繰返し応力反転挙動の実験挙動を非常に安定的に計測する実験手法の構築・実用化するとともに,上記変形挙動を定量的・定性的に検討することが可能な汎用FEMツールを開発・実用化した.実験に関しては,二軸引張り試験装置により高張力鋼板を代表とするプレス用鋼板の降伏曲面の取得を可能とした.また,面内繰返し反転試験によって大ひずみ域におけるプレス用板材の繰返し応力-ひずみ曲線を安定的に計測する手法の確立が出来た.更に上述プレス用板材の弾塑性変形挙動を非常に高精度に再現可能なプレス成形シミュレータを構築した.構築したシミュレータは現在,各ソフトウェアベンダーから"Yoshida-Uemoriモデル"としてその有用性が確認されている.より複雑な変形履歴を受けた鋼板の二軸変形・繰返し変形挙動の解析も行われている.解析では,上記巨視的塑性理論だけではなく,メゾミクロ領域での解析も行った.BCC結晶構造を考慮した結晶塑性有限要素法によって鋼板の面内繰返し解析,二軸引張り解析を行った.得られた結果を考慮すると,48すべり系を有するBCC金属材料の繰返し弾塑性変形挙動は(110)面の変形を中心にその変形が行われており,それを正確に記述する為には単結晶レベルでの構成式にバウシンガー効果(背応力)の考慮が必要であるという認識を得た.更に集合組織を考慮した解析結果より,初期集合組織は塑性変形進展時における流動応力値に影響を及ぼすが,バウシンガー効果には余り影響を与えない.
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