研究概要 |
現在,金属系インプラント材料としては,ステンレス鋼やTi合金,Co-Cr合金などが用いられているが,体重の約5倍程度の負荷が加わると言われる大腿骨・人工骨頭部には摺動性・耐摩耗性に優れたCo-Cr合金が多く用いられている.この部位に使用されるCo-Cr合金には優れた耐食性・耐摩耗性・腐食疲労特性等が要求されるうえ,化学的安定性を向上させるためにも,その表面には鏡面上の仕上がりが望まれる. 本研究は大腿骨・人工骨頭部に使用されるCo-Cr合金のさらなる高品位化に際して,一層の精度と表面機能の両立を達成するため,"サイマルプロセス(同時工程内)"でナノ精度加工と所望の表面機能(耐食性,耐摩耗性,生体適合性)を付与するという,革新性の高い独創的な表面改質加工技術の開発を目指す.本申請では,新しいナノ表面加工におけるサイマル表面改質加エプロセスを用いたバイオインプラント材料の高機能化を最終目的とし,この実現に向けて,以下の2つの項目を重要な柱として研究期間内に実施している. 1.人工骨頭用素材Co-Cr合金のナノ表面加工における先進的サイマル表面改質加工プロセスの確立 2.生体内環境をシミュレートした材料評価システムによる摩擦摩耗・腐食挙動の解明 具体的には,人工骨頭用Co-Cr合金に対する表面仕上げ法として超精密研削法を適用するための第一段階として,加工面の詳細な観察および分析を行った.その結果,#8000砥石による最終仕上げ加工によって,算術平均粗さRaで7nmという極めて良好な加工面粗さが得られた.さらに,アルミナ研磨材に比べてELID研削材は優れた表面硬さ,細胞毒性を示しており,その原因はELID研削がもたらすクロムの酸化現象および窒素の拡散現象であると示唆された.
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