研究概要 |
本研究の目的は,意匠設計の過程において他者間での注目点を交換・共有することにより,潜在する感性を喚起させ,新たな視点から創造的な設計代替案を創成する支援システム(以下,注目点共有設計システム)の構築にある.また,注目点の共有条件による潜在感性の喚起を,被験者による実験により確認する. 平成18年度は,まず,昨年度に構築した自己の潜在的な注目点にもとづく意匠形状創成システムを改良した.具体的には,異なるトポロジを有するパラメトリックモデルへの対応,および発散,収束プロセスを考慮した新しい形状オペレータの導入である.このシステムを基本として,他者間で,作成した代替案と視点の共有を可能とするシステムを構築した.さらに,被験者による本システムの評価実験を行った.実験では,他者の視点を共有しないで作成した単独解と,他者の視点を共有して作成した共有解との,満足度および意外性における比較評価実験を行った.その結果,他者と視点を共有した場合の共有解において,満足度について有意差が確認された.また,他者の代替案および視点の参照過程を詳細に分析したところ,自身の作成した形状とトポロジが異なる代替案,およびメタファによって表現される視点の有効性が確認された.被験者の内観調査の結果から,これらの参照過程では,他者の代替案または視点から想定外の視点を得ていることが確認された.このことは,潜在感性を喚起させる視点情報として異なるトポロジとメタファによる異質視点の提示が有効であると結論づけられた. 本研究の成果は,アメリカ機械学会設計工学技術会議にて発表予定(投稿中)である.また,昨年度および,今年度の成果の一部は,添付の学術雑誌に加えて,国内外の学会,講演会で発表し,第53回日本デザイン学会研究発表大会では,研究の内容についてグッド・プレゼンテーション賞を受賞した.
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