1997年の地球温暖化防止京都会議以降、二酸化炭素排出量削減の目的で自動車等エンジンの高効率化・軽量化の必要性が高まってきている。この問題を解決する一方法として、潤滑油の代わりに高温まで機能する固体潤滑剤をエンジンの高温摺動部に適用することが考えられる。現在大気中600℃以上で使用できる固体潤滑剤として、CaF_2等のフッ化物、Ag、BaCrO_4等が報告されている。しかしフッ化物は500℃以下で低摩擦を示さず、Ag及びBaCrO_4は室温〜800℃まで低摩擦を示すものの、前者はコスト的な、後者は劇物である欠点がある。 本研究では今年度、研究代表者が所属する研究グループで保有する放電プラズマ焼結機SPS-515(住友石炭鉱業(株)製)を用いて、Barite型結晶構造を持つBaSO_4、SrSO_4、PbSO_4を50mass%含むAl_2O_3基複合材料を作製し、ボールオンディスク摩擦試験機で大気中室温〜800℃における摩擦・摩耗特性の評価を行った。その結果、BaSO_4の他にSrSO_4、PbSO_4も大気中室温〜800℃まで固体潤滑剤として機能することを明らかにした。また化学析出法で表面にSrSO_4を析出、コーティングしたZrO_2(Y_2O_3)-Al_2O_3系複合材料基板は、大気中室温〜800℃で摩擦係数0.1〜0.3を示し、比摩耗量も10^<-7>mm^3/Nmオーダーを示すことを明らかにした。さらに硫酸バリウム粒子形状の高温摩擦特性に対する影響も調べ、面積が広く薄い板状粒子を用いた時、特に低温域でより低摩擦の得られることを明らかにした。
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