SiO2添加により耐摩耗性が大きく改善されるAl2O3-CaF2系複合材料の耐摩耗性改善機構を産業技術総合研究所で保有する透過型電子顕微鏡、及び当該研究グループにある走査型電子顕微鏡JSM-7400(日本電子(株)製)を用いて調査を行い、SiO2を添加したときAl2O3相とCaF2相の間の焼結中における反応が抑制されることがわかった。反応が抑制されるということは、固体潤滑剤CaF2相の体積比が焼結中にほとんど減少しないということを示しており、このことがAl2O3-CaF2系複合材料の耐摩耗性改善に貢献したものと予想される。 またSrSO4を分散させたNi-W-Mo基、ZrO2-Al2O3基複合材料の作製については、前者については融点の大きな低下が発生し焼結温度800℃以下であれば作製可能であること、後者については1200℃より高い温度で焼結するとSrSO4の分解の進行が早く、それ以下の温度で焼結する必要のあることがわかった。一般的にアルミナ、ジルコニア等のセラミックスの緻密にできる焼結温度は1250℃以上で、ややそれに届かないことから、Barite型硫酸塩含有セラミック基複合材料のさらなる緻密化のためには、Mn、Si系酸化物など焼結助剤の添加が必要であると考えられる。 さらにBarite型硫酸塩がガラス用型の離型剤として利用可能かどうか検討するため、現用のNi-20W-10Mo(mass%)及びBaSO4粉末被覆したZrO2-Al2O3複合材料基板に対するボロシリケートボールの摩擦・摩耗特性を評価し、後者の方が大気中200℃〜600℃で低摩擦(摩擦係数約0.3。前者は0.4〜0.5)を示すことがわかった。このことからBarite型硫酸塩はガラス用型の離型剤として応用が期待できると考えられ、今後実用化に向けてさらなる検討が必要であるということができる。
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