研究概要 |
低マッハ数の一様流中に置かれた翼型から放射される離散周波数騒音(DFN)について,まずは二次元非定常圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の直接数値シミュレーション(DNS)を用いて,DFNの発生条件を探った.DFNは翼後縁部での境界層厚さに支配され,翼厚への依存性は二次的であるため,本研究では翼形状をNACA0012,マッハ数を0.2に固定して,レイノルズ数の低い場合から高い場合へと計算を進めていった.レイノルズ数5,000の場合,迎角5°程度では単一周波数の純音が発生しており,鈍頭物体からのエオルス音と同様の発生メカニズムであることが分かった.迎角を8°〜10°にすると,高周波成分を伴う音が発生しはじめる.これは,翼前縁からの周期的剥離渦が,後縁より上流側の翼面上境界層に作用して,より小さな二次的な渦構造が出現し,それに応じて揚力変動に高周波成分が現れることと対応している.迎角を15°まで上げると,渦放出が非周期化するが,レイノルズ数を10,000,迎角を8°とした場合も同様である.このようにDFNが発生している場合では,音響学的類推(アナロジー)に基づき音源を点とみなして導出されるCurleの近似式では,ドップラー補正を行っても,指向特性などの予測が良好ではないことが明らかになってきた.三次元性の影響については,翼スパン方向に周期境界条件を課した計算を行う予定であったが,非常に大きな計算機性能が必要であることが分かってきたため,東北大学流体科学研究所未来流体情報創造センターの新しいスーパーコンピューターシステムSX-8上で最適化される三次元計算コードを開発中である.
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