短フェッチ・浅水域の特徴を持つ湖沼として、本年度は霞ヶ浦湖における現地観測結果の提供を受け、波浪スペクトルの一般的形状など浅水・短フェッチ域における基礎的な知見を明らかにした。南西風が比較的安定して卓越する秋季を取り上げ、2003年10月〜12月に行われた表面波高の観測結果の検討から、湖上風速が10m/s程度の一般的状況では、海洋域モデルで提唱されているブレッドシュナイダー・光易型のパワースペクトル形状に風波スペクトルが飽和段階で収斂されることを確認した。また、次年度以降開発を行う予定である2次元数値波浪解析モデルにおける、波浪生成モデルの検討として、風向を一定とした1次元数値波浪モデルの開発・検証を行った。数値波浪モデルには基礎式としてエネルギー平衡モデルを高精度移流解法であるCIP法で解く数値モデルを採用し、波浪生成項として海洋域で実用に供されているMRIモデルを採用した。湖上風をモデルへの入力条件として用意するためMATHEWモデルに基づく局地風場数値推算モデルを開発し、湖上における現地観測結果から湖上風分布を推定した。現地観測を行った期間における波浪再現計算を行った結果、湖心付近の比較的水深が深く湖岸の影響を受けづらい領域では、開発した1次元数値モデルと観測結果が良好な一致を示すことを確認した。その一方、水深が極端に浅くなり湖岸による入射波浪の反射・吸収の影響が顕著になる湖岸付近の領域では、長フェッチ・深水域を対象として開発されてきた海洋モデルでは波浪エネルギーを低めに見積もる傾向が観測され、本研究で対象とする超浅水域に対する波浪モデルでは、湖底摩擦・湖岸反射吸収、及び波浪生成項について検討と修正が必要であることが示唆される結果を得た。
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