研究概要 |
高速フレーム溶射は,機械部品の表面に耐磨耗性,耐食性,耐熱性などの機能を与えるドライコーティング法であり,あらゆる産業で必要とされる汎用の基盤技術である.しかし,燃焼ガスによる合金粉末の酸化のためコーティング強度は限界に達している.また,高温で酸化や窒化が生じるチタンなどの粉末の溶射は不可能である.本研究は,申請者が考案した温度制御室をもつ次世代型HVOF溶射装置により粉末の酸化を抑制してコーティングの強度を飛躍的に高めるための気体力学的な最適作動条件をモデル実験と数値シミュレーションにより明らかにすることを最終的な目的としている. 初年度である平成17年度は,従来のHVOF溶射装置を模擬したモデル実験を行った.モデル実験では燃焼ガスの代わりに常温の圧縮空気を用い,HVOF溶射装置(超音速ノズルと,その下流側に接続する直管)は真鍮で製作した.直管は実機を模擬した円形断面のものと,内部流れの可視化用に矩形断面のものも製作した.圧力センサーによる静圧測定で,ノズル上流のよどみ圧力が装置内の圧力分布,衝撃波の構造に与える影響を調べた.さらに,シュリーレン法により超音速噴流の構造も調べた.その結果,HVOF溶射装置内の流れには管摩擦が大きく影響していることや,よどみ圧力により装置内の衝撃波構造と噴流構造が大きく変わることが分かった.さらに,それらの実験データをもとに,申請者が開発した数値シミュレーションプログラムの計算精度の確認を行い,計算結果が妥当であることを確認した.
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