研究概要 |
本研究では,アイススラリーの流動挙動および融解挙動について実験的に検討を行うことを目的として,特に今年度は流動特性の把握に重点をおいて検討を行い,アイススラリーの圧力損失の測定を行った.エタノール水溶液を用いたアイススラリーを試料とし,過冷却状態にしたエタノール水溶液を過冷却解消させてアイススラリーを生成した.測定装置の配管径は10.2mmとし,装置は助走区間と測定区間と可視化区間に分けられる.実験では,測定区間の1mにおけるアイススラリーの圧力損失を測定し,これからアイススラリーの見かけの粘性係数を算出した.また,可視化区間では,アクリル管内に流れるアイススラリーを高速度カメラで撮影し,PIVシステムを用いて氷粒子の速度を算出した.実験条件として,Re数を500から1800の間で,またIPFを0%から20%の間で変化させた.見かけの粘性係数を算出するにあたっては,アイススラリーが円管内において層流で,ハーゲン・ポアズイユ流れであるとして粘性係数を算出した.氷粒子の存在をより明確にするために,あらかじめ測定した凝固点における水溶液の粘性係数の実測値で見かけの粘性係数を除したものを用いて計測結果を整理した.その結果,層流域では,Re数が小さくなるほど,粘性の比が大きくなっていることがわかった.また,Re数が1000より大きい領域では,粘性の比はすべてのIPFにおいてRe数によらずほぼ一定であるのに対して,Re数が1000より小さな領域では,大きな粘性変化があり,特にIPFが大きい場合にその変化は顕著になることがわかった.また,PIVによる氷の速度分布とその平均流速におけるハーゲン・ポアズイユ流れの流速分布を比較すると,液相が氷粒子を追い越して通過していることと,壁近傍の流速が大きくせん断速度が大きいことがわかり,これが原因で,アイススラリーの粘性係数が大きくなると考えられる.
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