研究概要 |
多くの伸長場での燃焼研究に対向流火炎が良く用いられ,これまで多くの知見が得られている.良く知られているように,対向流拡散火炎には二つの消炎限界が存在する.高い伸長率での伸長消炎限界,低い伸長率でのふく射消炎限界である.ふく射消炎は伸長率低下と共に火炎厚さが増し,熱発生率に対するふく射熱損失が増加することで起こる.一方,高伸長率では火炎が薄く,ふく射熱損失は小さいが,滞留時間が短いため消炎に至る.ところが,火炎帯にふく射性ガスである二酸化炭素や水蒸気が多く存在する場合,高い伸長率であってもふく射損失が増え無視出来なくなる可能性がある.また,未燃側にふく射性ガスが存在した場合,ふく射再吸収の効果が大きくなる可能性も考えられる.そこで,本研究では,酸化剤を高温の水蒸気で希釈した場合の水蒸気が高い伸長率での伸長消炎限界に及ぼす影響を明らかにした.酸化剤温度を500℃とし,過熱水蒸気及び窒素で希釈した場合について消炎限界の比較を行った結果,過熱水蒸気で希釈した場合では窒素で希釈した場合に比べ,消炎時伸長率が最大でおよそ50%程度低下することが明らかになった.さらに酸化剤温度を1000℃とし,過熱水蒸気で希釈した場合について消炎限界の測定を行った.また,詳細反応モデル及びふく射の放射・吸収を考慮した数値計算を行った結果,ふく射を単なる熱損失として扱うOptically thin仮定のふく射モデルでは,ふく射の再吸収を考慮したNarrow bandモデルに比べ,熱損失を大きく見積り,酸化剤温度が500℃の場合では消炎時伸長率を最大で30%程度低く見積もることが明らかになった.本研究により,火炎近傍にふく射性ガスが多く存在する場合,高い伸長率であってもふく射熱損失の影響が無視出来なくなることが明らかになった.
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