本研究は、超流動ヘリウム特有のファウンテン効果を利用し、超伝導導体表面の冷却を向上させることを目的としている。また、本体系を解析できる計算コードを開発し、多孔質材を介した超流動ヘリウムの熱物質輸送機構も明らかにする。 平成17年度は、加圧超流動ヘリウム中において多孔質材の定常熱物質輸送実験を行なった。本実験により、多孔質材を介した加圧超流動ヘリウムの熱物質輸送特性のうち、定常状態の特性を層流領域および乱流領域について明らかにした。層流領域については、熱物質輸送がロンドンの式に従うことが確認された。乱流領域については、ゴーター・メリンクの相互摩擦の影響が支配的となることがわかった。 また数値解析においては多孔質材内部の定常熱物質輸送を解析できる有限差分法の計算コードを開発した。本コードでは、超流動ヘリウムの二流体モデルの式を基礎式として、ゴーター・メリンクの相互摩擦と常流動成分の摩擦散逸、多孔質材内部の曲がり率を考慮した。計算においては、本実験に用いた多孔質材だけでなく、材質、厚さ、気孔率、平均細孔径、曲がり率が異なる多孔質材も対象とした。これらの計算結果は実験結果と非常によく一致しており、超流動ヘリウムの熱物質輸送は本モデルで記述できることがわかった。 以上の成果は、低温工学国際会議CEC2005(キーストーン・米国)で「EXPERIMENTAL AND NUMERICAL STUDIES ON THERMAL HYDRAULIC CHARACTERISTICS OF HE II THROUGH POROUS MEDIA」といい題目で登表された。また研究調査として、春季低温工学・超電導学会に出席し、情報収集・意見交換を行なった。
|