研究概要 |
本研究では,機械的刺激が骨芽細胞に入力された場合に細胞が刺激を感受して骨形成が促進されることを培養実験により検証し,この現象を機械力学的観点から捉え,動的モデルを構築することを目的とする. まず,細胞に対する機械的刺激の影響を検証するために,十分な剛性を有するよう設計された培養プレートに骨芽細胞を播種し,これを加振器に取り付け,培養面に対して垂直方向に正弦波加振することで細胞に慣性力による振動刺激を与えながら細胞培養を行った.慣性力が一定となるよう加速度振幅を一定とし,振動数を12.5,25,50,100,200Hzの5種類に設定した場合の細胞の形態,密度,骨産生量を経時的に28日間測定した.その結果,振動刺激によって細胞密度,骨産生量が増加し,その割合は振動数により異なることを示した.さらに,骨産生量に関しては,RT-PCR法によるALP遺伝子発現量の測定を行うことにより,25Hzで骨産生能のピークが存在し,また100Hz以上で骨産生能が増加することを定量的に示した. 次に,細胞の動的モデル構築のために,骨芽細胞の内部構造観察および力学特性の測定を行った.蛍光顕微鏡を用いて骨芽細胞を蛍光染色することで,細胞骨格の一つであるアクチンフィラメント,核および接着斑が細胞内において骨組構造,支持構造をなしていることを確認した.細胞構成要素のうち細胞膜および核膜の引張試験を顕微鏡下にて行った.マイクロピペットの先端に試料を付着させて引っ張った際のピペットのたわみから微小な張力を測定した.その結果,核膜は細胞膜に比べ弾性率が5倍程度大きいことを示した.さらに,骨芽細胞は足場となる細胞外マトリクスに接着して形態を維持しているので,細胞接着という支持条件のもとで細胞全体のクリープ試験を行い,粘弾性特性を測定し,ばね要素1つと粘性減衰要素2つからなる3要素モデルでその特性をモデル化した.
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